2020.12.26 お相手:鈴木軍平さん
大船渡市末崎町にある「居場所ハウス」。ここは、日本大震災からの復興の拠点として、アメリカのハネウェル社からの支援を受けて建設されました。
特定非営利活動法人・居場所創造プロジェクトのメンバーが運営をしており、世代を問わず、誰もが気軽に立ち寄り、思い思いに過ごせる場所づくりを目指しています。
今回は、その居場所創造プロジェクトの理事長を務める鈴木軍平さんに取材をさせていただきました。
震災を機にスタートした居場所ハウスで大切にしていることや、取り組みの一つである「ころ柿」づくりについて、ご紹介します!
居場所ハウスの取り組み
居場所ハウスでは、高齢者を中心とする地域の人々が地域における自分の役割を見つけ、力を合わせながら、つながりを作っていけることを目指しており、その活動は多岐にわたります。
例えば、地域に気軽に買い物できる場所がないため、月に一度朝市を開催し、衣食住を賄えるように食材や雑貨、衣類などを販売しています。郷土料理づくりや生花教室、手芸教室など、各々が自由にやりたいことに挑戦し、世代を問わず交流できるようなイベントも開かれています。
また、居場所ハウスにはスマイル食堂があり、500円で気軽に食べられるようなメニューが用意されています。
朝市でにぎわう居場所ハウスの様子
居場所ハウスの交流スペース
上記のような多様な活動に取り組む中で、居場所ハウスが大切にし続けているのは「地域のニーズに合わせた取り組みを行うこと」です。
活動の幅が広いからこそ、社会情勢や地域ニーズを的確に捉えなければ、何をやっているのかがわからなくなってしまうそう。そのため、地域の方々からの声に耳を傾け、メンバーとの定例会で話をしながら、事業を立ち上げて広めていくという取り組みをされています。
しかし、常に限られた資金の中で地域ニーズに応えていく必要があるため、ボランティアだけでは存続が難しいのが現状。そのため、スマイル食堂のような事業で得た運営資金や補助金を活用しながら、やりくりをしていかなければならないという厳しい一面もあるそうです。
その運営資金を得るための一つの取り組みが、これからご紹介する「ころ柿」づくりです。
「もったいない」の気持ちからはじまったころ柿づくり
「ころ柿」とは気仙地方で栽培されている小枝柿を乾燥させた特産品です。
気仙地域の柿はなぜか種がなく、この地域では昔からおなじみの食べ物です。
しかし、地域の高齢化に伴い、収穫する人が減ってきているそう。その状況を知り、「もったいないから何とかできないか」と考えたのが鈴木さんです。
現在は、居場所ハウスの取り組みの一つとして、休みの日に居場所ハウスのメンバーで集まって柿を収穫し、活動資金にされています。
実は私、柿自体は苦手意識があったのですが、ころ柿は全く別もの。甘くておいしいので、おすすめです!
ころ柿は毎月開催される朝市でゲットできます
ころ柿の作り方
①収穫した柿の皮を機械でむく
②1つ1つの柿をプラスチックの器具(左の写真)に通し、つるす
③あめ色に仕上げるため、硫黄くん蒸する
④軒下に30~40日つるし、自然乾燥させる
⑤乾燥させた柿を整形し、白粉を少し出した状態にしたら完成!
これからの展望
今後も地域のニーズをくみ取りながら居場所ハウスを運営していきたいという鈴木さん。
そのためにも、「人との信頼関係を築くこと」を大切にしていきたいと語っていらっしゃいました。
地域の方々のお話をただ受け止めるだけでなく、それに応えようと全力で取り組む姿勢を持つこと。そして、自分たちの取り組みを地域に周知すること。これらが人との信頼関係を築く秘訣だと教えていただきました。
地域にかかわる仕事に携わる身として、私自身も大切にしていきたいことだと強く感じました。
今回はころ柿づくりをメインに取り上げさせていただきましたが、ここではご紹介しきれないほど様々な事業を展開されています。
人とのつながりを広げたい方、何か新しいことに取り組んでみたい方、お困りごとがあり誰かに相談したいという方…ぜひ一度居場所ハウスに足を運んでみてください!
居場所ハウス運営メンバーの皆さんとの記念写真。
お優しい方ばかりです!
取材者:けせん地域取材チーム ひとみん
鈴木軍平さん
大船渡市出身。元地方公務員で、現在は特定非営利活動法人・居場所創造プロジェクトの理事長を務めている。 地域と深くかかわり、ニーズに合わせた様々な取り組みに尽力しており、多くの地域住民から慕われている。