けせん震災と昔の記憶

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料理
椿ゆべし作り

見出し「料理」

2020.12.12  お相手:及川定子さん

 「日本四大名工」の一つに選ばれている気仙大工。
 家大工から宮大工までこなす、その優れた建築技法を後世に伝えるため、1992年に建設されたのが気仙大工左官伝承館です。
 発祥の地である、陸前高田市の小友町に位置しています。

 ここでは、気仙大工によって建てられた母屋や当時の暮らしに使われていたモノたちについて、気さくなスタッフの皆さんが丁寧かつ楽しく紹介をしてくれます。

 でも、実はそれだけではありません。
 江戸時代に徳川家へ献上されたお菓子とも、農家で作られていた定番のおやつとも言われる「ゆべし」。
 全国各地にありますが、地域によって材料もかたちもさまざまです。
 ここでは、陸前高田市の花にも選ばれている「椿(つばき)」をイメージした、「椿ゆべしづくり」を体験することができます!

 今回は、スタッフの定子さんと小春さんにご協力を頂き、実際に体験をさせていただきました。
 気仙大工左官伝承館の歴史や想いについてのお話、可愛らしさ抜群の椿ゆべしづくり体験の内容をご紹介します!

椿ゆべし1

まずは「椿ゆべしづくり」を体験!

 ざっくり、つくる流れはこんな感じです。

①米粉ともち粉を混ぜ合わせ、お湯を回し入れながらこねる。

②つやつやしてきたら、生地をいくつかに等分し、丸めてつぶす。

椿ゆべし2

③約20分蒸す間に、赤と黄色の食紅液を用意。

椿ゆべし3

④蒸した生地と食紅液を混ぜてこねる。

椿ゆべし4

⑤椿をイメージして各々自由にかたちづくれば、完成!

 簡単に、みんなでワイワイやりながら作れる椿ゆべし。
 スタッフさんが採れたての椿の葉を用意してくれており、お皿にその葉を添えて乗せると、「あれ、お店の商品みたいじゃない?」とうぬぼれてしまうほど、ステキに仕上がります。
 さらに、ゆべしを頂く際、自分で「お茶を点てる」体験もできます。
 海の見える母屋で、自分でつくったゆべしを食べつつ、お茶を一服。良い休日になりました。

 気仙大工左官伝承館では、椿ゆべし以外にも、2月22日の「にゃんにゃんの日」には猫や肉球をかたどったゆべしを作ったり、小正月には伝承館にやってきた方々を誘って「みずき団子」を作ったりと、いろいろ取り組まれているそう。
 「これやってみたい」「こんな体験ほしい」などのご意見も歓迎しているそうですので、スタッフさんに相談してみたら、自分の希望が叶うかもしれません!

椿ゆべし5
気仙大工左官伝承館

気仙大工左官伝承館

これまで・震災時のできごと

 1992年、県と市によって、「気仙大工の優れた技術をきちんと残したい」という想いで建設されたのがはじまりです。

 明治初期の庄屋さんをイメージして作られています。「展示館として見せるなら心に残るものを」と、重厚な家構えで、気仙大工の技術を凝らした建物ができあがりました。

 東日本大震災が起きた際、市の観光施設として唯一残ったのが気仙大工左官伝承館でした。
 流れ込んだ水によって広田半島が孤立してしまったため、皆で雑魚寝をするような形で夜を明かす日もあったそうです。

 また、自衛隊や警察の中継地点としての機能も担いつつ、外からボランティアとしてやってきてくれた方々が炉端で休んだり、縁側でスタッフさんと話をしたり、ボランティア同士の交流が生まれたりする場にもなっており、幅広い方々の支えとなっていました。

 震災により、古くから存在していた気仙大工によって建てられた家の多くが失われてしまったこともあり、今では、その気仙大工の技術を後世に伝える重要な場所としての役割を担っています。

大切にしている想い・これからのこと

 気仙大工左官伝承館の皆さんは、被災してふるさとの家を失ってしまった方も大勢いらっしゃる中で、「昔の家を思い出せる我が家」だと思っていただけるような場所にしたいという想いを持って取り組んでいます。

 今回お話をしてくださった定子さん自身は、震災で仕事を失い困っていた時期もあったそうですが、ご縁で今の仕事に巡り合えたことに感謝の気持ちを強く持っており、「おかげさま」の精神で日々励んでいらっしゃるそうです。

 実家だと思って、ゆっくりと休んでもらえたら嬉しいし、「楽しい」「よかった」の一声をいただけるだけで、「やっていてよかった」と思える。そうおっしゃっていました。

 今後は、コロナの問題もある中で、若い方々の意見も取り入れながら、「何をすべきなのか」「この状況下でできることは何か」を模索していきたいと考えていらっしゃいます。

 いつでも温かく訪れた人を迎え入れてくれる気仙大工左官伝承館。
 「ゆべしづくりをしてみたい」「気持ちがモヤモヤしていてどこかに吐き出したい」、どんな方でも、ぜひ足を運んでみてください。

取材者:けせん地域取材チーム ひとみん

プロフィール写真

及川定子さん


陸前高田市の小友町にある気仙大工左官伝承館で語り部を務める。自然の中で生きるのが好き。自給自足で生きたいという想いも持っている。
※ご指導くださった定子さん(前列右)、小春さん(前列左)、参加者