けせん震災と昔の記憶

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料理
ハレの郷土料理くるみ餅作り

見出し「料理」

2020.11.14  お相手:岡本啓子さん

 気仙の郷土料理くるみ餅。やわらかなお餅に香り豊かなくるみのタレがとろ~っと絡み、まさに絶品です。
 ハレの日には必ずと言っていいほど振る舞われるくるみ餅は、気仙地域の各家庭でこだわりを持って作られています。気仙の人が集まってくるみ餅の話題になると、くるみの種類、集め方、割り方、味付け、お湯でのばすかお茶でのばすか、家族の誰が担当か、くるみ餅にまつわる思い出…と大盛り上がり。
 今回はお料理上手の岡本啓子さんにくるみ餅の作り方や昔のお話を伺ってきました。

くるみ餅は家族みんなで作るもの

 くるみ餅の材料となるオニクルミは地域にたくさん自生しており、くるみを拾い集める木はだいたい家庭ごとに決まっています。なんと海岸で拾ってくることもあるそうです。と言っても海にくるみの木があるわけではなく、川に落ちたくるみの実が海辺にたくさん流れ着くのだとか。

 岡本家では、ばあちゃんから受け継いだ石とトンカチを使ってくるみを割ります。石にはくるみを割るのにちょうどいい大きさの窪みがあり、これは数十年に渡る経年で出来たもの。オニクルミはとても固いのですが、石とトンカチでとんとんとん…と何度か叩くと真ん中できれいに割れます。

くるみ餅作り1

陸前高田市内に自生するオニクルミの木

 くるみ餅作りは男性や子どもも手伝います。交代でくるみを割ったり、座っておしゃべりをしながら実をほじったり。小さな殻を取り除くときは目の良い子どもたちの出番。実をすりつぶすのは力仕事なので、すり鉢を抑える人・すりつぶす人と交代しながら行います。くるみ餅作りはとにかく手間がかかるので、家族みんなで数日に分けて作業することもあるそうです。

くるみ餅はハレの食べ物

 くるみ餅はハレの食べ物なので、正月や祝いごと、葬式など、おもてなしをするときには必ず振る舞います。あんこ餅よりもやっぱりくるみ餅が喜ばれるそう。

 手間がかかるくるみ餅ですが、突然のおもてなしの際には親戚や近所の人が集まってあっという間に作ってしまうそうです。そういうときの味付けの指示は「めんばん」と呼ばれる長が行います。

 いつでもくるみ餅を作れるよう、岡本家ではくるみやお餅は1年中常備しておくそうです。

岡本家のくるみ餅レシピ

 

 岡本さんと一緒にくるみ餅を作りながらレシピを教えてもらいました。

材料
・オニクルミ可食部 約150g
・砂糖 約100g
・醤油 約おおさじ3
・お湯 適量

くるみ餅作り2

① 殻を割る

くるみ餅作り3

② 実をほじり出す
③ 竹串で殻やゴミを取り除く

くるみ餅作り4

④ 実を細かくすりつぶす

くるみ餅作り5

⑤ 砂糖を入れてする
⑥ 醤油を入れてする

くるみ餅作り6

⑦ 少しずつお湯を入れながらする

くるみ餅作り6

⑧ つきたてのお餅と和える

 

 レシピに目安の分量を記載していますが、実際には岡本さんはすべて目分量で味付けをし、わずか1~2回の味見だけで完成。作り立てのくるみ餅は大変美味でした。
 岡本さんの手慣れた様子や生き生きとしたお話ぶりに、気仙のひとびとの暮らしにくるみ餅がしっかり根付いていることを感じました。

取材者:けせん地域取材チーム まいたん

プロフィール写真

岡本啓子さん


陸前高田市出身。震災後より一般社団法人SaveTakata(現トナリノ)で勤務するかたわら、陸前高田の特産品・米崎りんごのジャムとジュースを製造・販売する「らら・ばれっと」を起業。トナリノ事務所で手作りのなべやきやりんごのケーキをたびたび振る舞い、職員みんなのお腹と心を満たしている。